トゥールビヨン・アール・デコ

ピエール・クンツ<PIERRE KUNZ カタログ>トゥールビヨン・アール・デコ

2005年のW.P.H.H.におきまして世界初のスクエア・テンプを搭載して話題となりました、トゥールビヨン「トータル・スクエア」の機構を受け継ぎ、さらに1920年代〜1930年代のアール・デコ様式をデザインベースとした「トゥールビヨン アール・デコ」を発表しました。

インデックスのアラビア数字はもちろん、精悍な表情のスクエアケースや、エンパイア・ステートビルをモチーフとした独自のデザイン針などアール・デコ建築の傾向を忠実に再現しています。また、文字盤はガルパニック・コロージョン(化学反応によって金属を電気破壊させる)によって鏡面仕上げされ、6時位置に配された“スクエア・トゥールビヨン”をより強調させています。

通常、丸型のテンプは中心からの距離が均等であり、もともと回転運動をするシステムであるが故、数百年もの間「丸い輪」とされていたテンプの常識をクンツは覆し、角型のテンプを現実のものとさせました。このスクエア・テンプの四つ角の内側はアール状に削り取られ、それぞれのアールを繋ぐと真円に近づくように設計されています。回転を始めると外角には強い空気抵抗が発生するのを回避させる為に、それぞれの角に少し厚みを持たせ、絶妙な角度の流曲線を施したのです。

さらに気温差による金属の膨張を軽減させる為、膨張率が一番低いといわれるルテニウム・プラチナを採用し、トゥールビヨンの精度をより高めています。
また、「アール・デコ」と名付けられたこのモデルは、クンツが日本を訪問した際に、印象に残った独特なデザインスタイルの影響を強く受けており、特に、裏蓋の格子状ブリッジは、日本を代表する数奇屋造りや欄間などを連想させる日本独特の空間表現が満ち溢れています。この「トゥールビヨン アール・デコ」は、数々の困難を革新的な発想によって克服し続ける脅威の技術力と、デザインへの飽くなき追及によってかんせいしたピエール・クンツの最高傑作といえます。

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